国交省「公式本」から新幹線「基本計画線」の距離が消えた! 

運営部(K)です。『未来鉄道データベース』の内容更新に向け、新幹線の「基本計画線」に関する基礎的なデータをいろいろ確認しています。まずは建設距離を再確認しようと、運輸総合研究所が毎年ほぼ1回発行している国土交通省鉄道局監修『数字でみる鉄道』を読んでみたところ……あれ? 距離が書かれていない?

基本計画線の四国新幹線を通すことが想定されている大鳴門橋の下の鉄道建設スペース。【撮影:2011年7月、運営部(K)】

基本計画線とは、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づき基本計画が決定している、新幹線の建設線のこと。現在は以下の11線が基本計画線です。

全幹法では、基本計画決定→整備計画決定→工事実施計画認可という流れで新幹線の建設工事に着手することを定めていますが、1973年11月15日に基本計画が決定した12線は中央新幹線を除き、その先の整備計画決定の手続きに進んでいません。要は石油ショックやら国の財政難やら国鉄の経営悪化やらで、事実上の凍結状態になったわけですが。

基本計画では路線名、起点と終点、主要な経過地しか定めていないので、この段階では距離はもちろん分かりません。とはいえ、起点と終点、おもな経由地が分かっていれば、大まかなルートや距離はだいたい推測できます。

国交省の「公式本」といえる『数字でみる鉄道』でも、2017年版(2017年11月発行)までは基本計画線の大まかな距離を載せていました。ほかの新幹線との共用区間がある場合は、共用区間を除いた距離を示し、備考欄に「キロ程には○○新幹線との共用区間は含まない」と記していましたから、だいたいのルートは想像できたのです。

ところが、2018年版(2019年1月発行)では距離の欄が空白に。備考欄は枠線ごと消えてしまいました。

2017年版以前の『数字でみる鉄道』には基本計画線の距離が記されていた。画像は『数字でみる鉄道2017』。
『数字でみる鉄道2018』では基本計画線の距離欄が空白になり、備考欄もなくなった。

これはおそらく、北陸新幹線の未着工区間(敦賀~大阪)のルートが、当初想定されていたものから大きく変化したことが背景にあるんじゃないかと思います。

もともとは敦賀~小浜~大阪のルートが想定されていましたが、のちに建設費の削減などの観点から、敦賀~米原や敦賀~京都(米原・京都~大阪間は東海道新幹線への乗り入れを想定)で整備する案も浮上。何度かの議論を経て、敦賀~小浜~京都~松井山手~大阪のルートで整備することがほぼ確定しました。

距離は偶然にも当初の想定とほぼ同じですが、仮に米原ルートや京都ルートが採用されていれば、距離は大きく変わっていました。

近年、整備新幹線の建設が進んだこともあって、「整備新幹線の次は基本計画線」ということなのか、各地で基本計画線の建設を求める動きが活発になってきました。今後は詳細なルートの選定も議題になり、当初の想定よりルートや距離が大きく変わる可能性もあるでしょう。そうした状況のなか、下手に距離を示さないほうがいいという判断があったのでしょうか。

距離を示すということは、ルートもある程度は推測できるわけですが、そこから大きく外れたルートに変更しようとすれば、それに反対する勢力が「国交省の『公式本』では距離が示されていたではないか。この距離ならあのルートしか考えられない。国はいままでの『公式見解』をほごにするのか」と言い出しそうですしねえ……。

まあしかし、『数字でみる』本が距離という数字を消したというのは、ちょっと違和感を覚えますけど。