富士トラム:富士吉田~富士山5合目

富士トラムは山梨県の構想。富士山有料道路(富士スバルライン)に非軌道・誘導系のゴムタイヤ交通システムを導入し、富士山の環境保全や安全対策の強化を図る。

ルート

富士トラムの整備が推定されるルート(赤)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

富士スバルラインを活用して富士山の山麓(富士吉田インターチェンジ付近)から5合目まで整備するが、詳細なルートは確定していない。路面に磁気マーカーや白線を整備し、これをゴムタイヤ車両が読み取ることで車両を所定の方向に誘導する交通システムを導入することが考えられている。

山梨県が2025年6月に公表した調査結果では、悪天候や積雪の影響を受けにくい磁気マーカー誘導式が優位としている。また、道路交通法による通行制限を可能とするため、軌道法(路面電車や都市モノレールの法律)に基づく軌道として整備することを想定する。

このほか、一般道に乗り入れてリニア中央新幹線の山梨県駅など県内各地を結ぶことも考えられており、こちらは道路運送車両法を車両に適用することが考えられている。

運行計画

運行計画は未定。2024年度の調査による前提条件では、軌道法による運行区間を富士吉田インターチェンジに近い富士急行バスの世界遺産センター停留場から5合目までとしている。所要時間は往路が52分30秒、復路が48分30秒で往復時間の合計が101分。1時間あたりの運行本数はピーク時10本、オフピーク時4本とし、運転間隔は6分ヘッドとしている。

車両は3車体連節・低床式を想定。1編成の長さは30mで、編成両端に運転台を設けて折り返し運転に対応する。走行性能は最高速度100km/hで半径15mのカーブ通過と130パーミルの勾配通過に対応できるものとする。運用面では2編成連結状態での運行を想定し、連結運転時の輸送力は120人。調達編成数は40編成(予備6編成を含む)としている。

事業方式

事業方式は未定。2024年度の調査では導入コストを618億円としている。

開業時期

開業時期は未定で事業化のめども立っていない。山梨県は今後、具体案の検討を進めるとみられる。

山梨県は従来、鉄レール上を鉄車輪の車両が走る路面電車方式・架線レスの軽量軌道交通(LRT)「富士山登山鉄道」を富士スバルラインに整備する方向で検討していた。しかし環境保全や安全性に問題があるとして地元の富士吉田市を中心に反対意見が多いことから、富士山登山鉄道の整備を断念。その代替として富士トラムを構想したという経緯がある。

データ

※日本工営・日本交通計画協会『富士山新交通システム調査 検討業務委託』(2025年3月)
※山梨県『富士山新交通システムに係る令和6年度調査検討結果報告』(2025年6月5日)など

区間:富士吉田IC西交差点付近~富士山5合目
距離:約25~28km