新空港線:矢口渡~蒲田~京急蒲田~大鳥居

新空港線は、東急多摩川線の矢口渡駅から蒲田駅(JR・東急)と京急蒲田駅を経由して京急空港線の大鳥居駅に至る新線を整備する、東京都大田区や東急電鉄などの計画・構想。「蒲蒲線」「大田区東西鉄道」などとも呼ばれる。

約800m離れた蒲田駅と京急蒲田駅の連絡を図るほか、東急線方面から羽田空港へのアクセス向上を図る。現在は矢口渡方面~蒲田~京急蒲田駅付近を第1期整備区間とし、事業化に向けた準備が進められている。

ルート

新空港線(蒲蒲線)のルート(赤)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

詳細なルートは確定していない。

第1期整備区間は、矢口渡駅から蒲田方面へ約400mの地点(都道311号環状八号線との交差部付近)で東急多摩川線の現在の線路から分岐。地下トンネルに入って現在の東急多摩川線に沿って東進し、蒲田駅の現在の東急線ホームの地下に新空港線のホームを設ける。JR東海道本線(京浜東北線)と交差してさらに東に進み、京急蒲田駅の南側地下に新空港線の京急蒲田駅付近駅を設ける。

新規の営業区間としては蒲田~京急蒲田駅付近のみで、矢口渡方面~蒲田は既設の東急多摩川線の改良(地下化)の形になる。営業主体の東急電鉄と整備主体の羽田エアポートラインは蒲田~京急蒲田駅付近を「連絡線」、羽田エアポートラインは矢口渡方面~蒲田を「連絡施設」と呼称している。

第2期整備区間は京急蒲田駅付近から地下トンネルでしばらく東に進み、地上に出て京急空港線・糀谷~大鳥居の線路に接続。再び地下に入って大鳥居駅に乗り入れる。

運行計画

具体的な運行計画は未定。第1期整備区間の開業時は、新空港線を経由する列車の運行区間を渋谷方面~多摩川駅~蒲田駅~京急蒲田駅付近とし、東急多摩川線と新空港線の直通運行を実施。一部の列車は東急東横線への乗り入れを想定している。

所要時間は中目黒~京急蒲田駅付近が現在の約36分に対し約13分短縮の約23分、自由が丘~京急蒲田駅付近は現在の約37分に対し約22分短縮の約15分になる。

第2期整備区間の開業時には、京急空港線にも乗り入れて東急線から羽田空港への直通列車の運行が考えられている。ただし、東急線の軌間が1067mmの狭軌なのに対し、京急線の軌間は1435mmの標準軌。直通列車を運行する場合、軌間可変車両(フリーゲージトレイン)を導入するか、京急空港線の3線軌条化などを行う必要がある。直通しない場合は大鳥居駅を改良し、同じホームで乗り換え可能な対面乗換方式の導入が考えられる。

事業方式

第1期整備区間は、都市鉄道等利便増進法に基づく速達性向上事業として整備する予定。大田区と東急電鉄が設立した第三セクターの羽田エアポートラインを整備主体、東急電鉄を営業主体とし、受益活用型の上下分離方式により整備、運営する。

第三セクターの羽田エアポートラインが整備し、完成後は東急電鉄が羽田エアポートラインから線路施設を借り受けて列車を運行する。東急電鉄は羽田エアポートラインに利益が出る範囲内で線路使用料を支払う。

総事業費は2022年の大田区の試算で1360億円。羽田エアポートラインは2025年1月時点で概算総事業費を約1250億円としている。国と地方公共団体が3分の1ずつ負担する。地方公共団体分の負担割合は東京都が3割で大田区が7割。残り3分の1は借入金などで賄い、線路使用料で返済する。

第2期整備区間の事業方式は未定。

開業時期

第1期整備区間は羽田エアポートラインが整備に要する期間を2025年度下期~2041年度末としており、現在の計画では遅くとも2042年春には開業する。2025年1月、都市鉄道等利便増進法に基づき東急電鉄が営業構想認定、羽田エアポートラインが整備構想認定を申請した。

第2期整備区間の開業時期は未定。採算性や異軌間直通などの課題もあり、事業化のめどは立っていない。

データ

■第1期整備区間

●営業構想認定申請(2025年1月17日)
営業構想認定申請者:東急電鉄
区間・駅:蒲田~京急蒲田駅付近
距離:約0.8km

●整備構想認定申請(2025年1月17日)など
整備構想認定申請者:羽田エアポートライン
区間・駅:(矢口渡~蒲田の中間)~蒲田~京急蒲田駅付近
距離:約1.7km
種類:普通鉄道
動力:電気(直流1500V)
軌間:1067mm
単複:複線
工事予定期間:2025年度下期~2041年度末

■第2期整備区間

●大田区想定(2023年4月19日時点)など
構想者:大田区
区間・駅:京急蒲田~大鳥居
距離:約2km