羽田空港アクセス線は、東京都心から羽田空港に乗り入れる鉄道を整備するJR東日本の構想・計画。
東京都心から既設線の改良や短絡線の整備によって東京貨物ターミナル駅付近に乗り入れる「東山手ルート」「西山手ルート」「臨海部ルート」の3ルートと、東京貨物ターミナル駅付近~羽田空港を結ぶ「アクセス新線」で構成される。このうち東山手ルートとアクセス新線が先行して事業に着手している。
ルート
東山手ルートは、東海道線の田町駅付近で上下線のあいだから分岐。単線で東海道線の下り線と東海道新幹線の上下線をくぐり、東海道新幹線の東側にある東海道本線貨物支線(大汐線)の複線の線路に接続する。大汐線は1998年から休止中。東山手ルートでの活用のため改修する。高架橋で湾岸部を通り、東京貨物ターミナル駅の東側に入る。
アクセス新線は、東京貨物ターミナル駅付近から羽田空港までほぼトンネル。線路は複線で、湾岸部の埋立地や運河をくぐって羽田空港に入る。第1ターミナルと第2ターミナルのあいだに、空港構内の道路下に終点の羽田空港新駅を設ける。
2016年4月の交通政策審議会答申第198号では、さらに第3ターミナルへの延伸を今後の課題として取り上げており、JR東日本の構想図などでも第3ターミナルへのルートが描かれている。
羽田空港新駅以外に駅を設ける計画はないが、東京都品川区が西山手ルートや臨海部ルートも含め区内新駅の可能性を検討している。
運行計画
具体的な運行計画は未定。運行本数は1時間あたり8本、1日144本とされている。東京駅に加え、東北本線(宇都宮線)・高崎線・常磐線方面からも上野東京ラインを介して羽田空港への直通列車が運行される。東京駅~羽田空港の所要時間は約18分。既設の鉄道の乗り継ぎより10分程度短縮される。
事業方式
JR東日本が第1種鉄道事業者として建設、運営する。東山手ルートとアクセス新線をあわせた概算事業費は約2800億円。このうち約700億円は国の空港整備事業になる。
アクセス新線は2021年1月の鉄道事業許可を経て2023年3月に工事施行認可を受けた。東山手ルートになる貨物線の大汐線は定期運行の旅客列車は運行されていなかったが、1987年の国鉄分割民営化の際はJR貨物ではなくJR東日本が第1種鉄道事業者として施設を引き継いだ。2023年1月31日に鉄道施設変更認可を受けている。
開業時期
羽田空港新駅までは2031年度の開業が予定されている。JR東日本は2023年6月に起工式を開き、本格的な工事に着手した。第3ターミナルへの延伸は具体的な動きがない。
データ
●東山手ルート
■第1種鉄道事業許可(1987年4月1日)
■鉄道施設変更認可(2023年1月31日)
第1種鉄道事業者:東日本旅客鉄道(JR東日本)
線名:東海道本線(大汐線)
区間・駅:(田町駅付近)~(東京貨物ターミナル駅付近)
距離:約7.4km
種類:普通鉄道
動力:電気(直流1500V)
軌間:1067mm
単複:単線(田町駅付近)・複線
供用予定時期:2031年度
●アクセス新線
■第1種鉄道事業許可(2021年1月20日)
■工事施行認可(2023年1月31日)
第1種鉄道事業者:東日本旅客鉄道(JR東日本)
線名:東海道本線
区間・駅:(東京貨物ターミナル駅付近)~羽田空港新駅
距離:約5.0km
種類:普通鉄道
動力:電気(直流1500V)
軌間:1067mm
単複:複線
開業予定時期:2031年度
備考:『JR東日本グループ経営ビジョン 変革2027』(2018年7月3日)などでは羽田空港新駅から第3ターミナルへのルートも描かれている。