北陸新幹線の延伸:敦賀~新大阪

北陸新幹線は、東京都から長野市付近や富山市付近を経由して大阪市に至る新幹線鉄道の建設線。東京~大宮~高崎は東北・上越新幹線と線路を共用し、高崎~長野~金沢~敦賀が1997年から2024年にかけ開業した。残る敦賀~新大阪は未着工。

ルート・駅

ルートは確定していないが、いわゆる「小浜・京都ルート」で整備することが考えられている。

2024年の8月から11月にかけて鉄道・運輸機構が公表した小浜・京都ルートの調査概要によると、敦賀駅から福井県内の若狭湾沿いを西に進み、福井県から京都市まで山岳地帯を南下。京都市から大阪市にかけてはほぼ淀川の南側を進む。全線ほぼトンネルで地上に出る部分は全体の1割強程度とみられる。

鉄道・運輸機構の調査概要による北陸新幹線(小浜・京都ルート)のルート。京都駅の前後は3案ある。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

駅は「小浜市(東小浜)付近駅」「京都駅」「京田辺市(松井山手)付近駅」「新大阪駅」の4駅を整備する。

小浜市(東小浜)付近駅は、舞鶴若狭自動車道・小浜インターチェンジの東側で、小浜線・東小浜~小浜の線路との交差部付近に高架駅を整備する。これ以外の3駅はすべて地下駅。

京都駅は、既設の京都駅の南側に東西方向の地下ホームを設ける東西案、既設京都駅の西寄り南側に南北方向の地下ホームを設ける南北案、JR東海道本線(JR京都線)の桂川駅の北寄り西側に地下ホームを設ける桂川案の3案が検討されている。3案のルートの合流地点近く(巨椋池干拓地南部)の地上には車両基地を整備する。

京田辺市(松井山手)付近駅は、JR片町線(学研都市線)の松井山手駅と第2京阪道路・京田辺パーキングエリアに挟まれたエリアに地下ホームを整備する。終点の新大阪駅は東海道・山陽新幹線ホームの南側地下にホームを整備する。

事業方式

鉄道・運輸機構が建設し、完成後はJR西日本が受益の範囲内で線路使用料を払って列車を運行する。建設費は整備新幹線の財源スキームに基づき、国と沿線自治体が負担し、

費用

鉄道・運輸機構の調査概要によると、2024年4月の価格を基準とした事業費は東西案が3兆7000億円、南北案が3兆9000億円、桂川案が3兆4000億円。さらに今後の物価上昇を見込んだ場合は東西案が5兆3000億円、南北案が5兆2000億円、桂川案が4兆8000億円とされている。

効果

最高速度を整備新幹線の標準である260km/hとした場合、最短所要時間は敦賀~新大阪で43分。現在の在来線特急は1時間16分で33分短縮される。福井~新大阪は55分、金沢~新大阪では1時間19分。敦賀駅での在来線と新幹線の乗り換えも解消される。

実現の可能性

最短で2051年ごろの開業が見込まれていたが、遅れる可能性が極めて高い。状況次第では建設自体が実現しない可能性も高まっている。

従来は2025年度末(2026年3月)の着工を想定。鉄道・運輸機構の調査概要によると、工期は東西案で28年程度、南北案で25年程度、桂川案で26年度程度とされており、開業時期は東西案が2054年ごろ、南北案が2051年ごろ、桂川案が2052年ごろになる。しかし、京都市が地下トンネルの建設による地下水への影響を懸念するなど沿線から不安の声が出ていることもあり、2025年度末の着工は断念された。

また、調査の深度化で従来の試算より事業費の増大や工期の延長が見込まれるようになったことから、費用便益比(B/C)は従来試算の1.1から0.5に下がるとみられ、整備新幹線の着工条件のうち投資効果を満たさない可能性が高くなっている。

このため、敦賀から東海道新幹線の米原駅まで延伸し、東海道新幹線への乗り入れや乗り継ぎによって大阪方面へのアクセスを図る米原ルートの再考を求める意見も浮上している。米原ルートの場合、建設距離は約50km。2016年度の試算では建設費が5900億円、B/Cが2.2とされていた。

データ

■基本計画決定(1972年6月29日)
■整備計画決定(1973年11月13日)
営業主体:西日本旅客鉄道(JR西日本)
建設主体:鉄道建設・運輸施設支援機構(鉄道・運輸機構)
線名:北陸新幹線
区間・駅:敦賀~小浜市(東小浜)付近~京都~京田辺市(松井山手)付近~新大阪 ※環境影響評価手続き中のルート
距離:約139~146km
種類:普通鉄道
動力:電気(交流2万50000V/60Hz)
軌間:1435mm
単複:複線