大阪モノレール線の延伸

大阪モノレール線は、大阪国際空港(伊丹空港)と堺泉北臨海工業地帯を結ぶ環状モノレール構想の一部。このうち北側の大阪空港~門真市間が開業しており、東側の門真市~瓜生堂間が2029年に開業する予定。南側の堺方面は実現のめどがたっていない。

概要

門真市~瓜生堂間は、大阪府道2号(大阪中央環状線)と高速道路の近畿自動車道に沿うルートで、複線の跨座(こざ)式モノレール軌道を整備する。駅は大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)長堀鶴見緑地線と西日本旅客鉄道(JR西日本)の片町線(学研都市線)、近畿日本鉄道(近鉄)けいはんな線、近鉄奈良線との交点に、それぞれ設けられる。

門真市駅/駅の南側にある引き上げ線。この軌道桁の先へ延ばす。【撮影:2019年12月13日、草町義和】

ただし、JR学研都市線との交差部に設けられる鴻池新田駅の予定地は、学研都市線の同名駅から約400m離れる。近鉄けいはんな線との交差部は中央環状線・近畿道から東側に少しそれ、近鉄けいはんな線の荒本駅の近くに駅を設ける。終点の瓜生堂駅は近鉄奈良線・八戸ノ里~若江岩田間のほぼ中間で交差する部分に設け、近くに車庫も設置される。また、近鉄奈良線側にも新駅を整備してモノレールとの連絡を図る。

1日あたりの運転本数は平日117本、休日115本を予定している。大阪の東郊から大阪空港へのアクセスが改善される見込みで、所要時間(現在の鉄道乗り継ぎルートとの比較)は門真南~大阪空港間が41分(30分短縮)、鴻池新田~大阪空港間が44分(21分短縮)、荒本~大阪空港間が49分(19分短縮)、瓜生堂~大阪空港間が53分(16分短縮)。乗換回数はいずれも現在より3回減ってゼロになる。

門真市駅/駅の南側にある引き上げ線。【撮影:2019年12月13日、草町義和】
門真市~門真南/写真の中央環状線・近畿道に沿って延伸する。【撮影:2019年12月13日、草町義和】

1日の需要は約3万9000人を想定している。事業費は約1050億円(特許時の税込価格)で、このうち国や自治体が道路施設扱いで建設費を負担する軌道桁など(インフラ部)は約740億円。残り約310億円は運営会社の大阪モノレール負担分で、日本政策投資銀行や市中の銀行からの借入金と沿線自治体の出資金で賄う。

経緯

戦後、大阪郊外のエリアが都市化に伴い人口が増加し、大阪の中心部と郊外を結ぶ鉄道各線も混雑するようになったことから、郊外同士を結ぶ環状路線の建設が考えられるようになった。

荒本駅/中央環状線・近畿道からそれて、東大阪市役所の東側付近に駅が設けられるとみられる。【撮影:2019年12月1日、草町義和】
瓜生堂駅/近鉄奈良線との交差部に駅を設置。近鉄奈良線にも新駅を設けて連絡する。【撮影:2019年12月14日、草町義和】

1966年頃から、日本万国博覧会(1970年の大阪万博)の開催にあわせて万博会場と周辺の郊外エリアを結ぶ鉄道の構想が浮上。運輸大臣の諮問機関・都市交通審議会が1971年1月27日に大阪圏の都市鉄道整備基本計画を答申(都交審13号答申)し、このなかに「(大阪府)豊中市新大阪~中央環状道路ぞい~堺市」の新線ルートが盛り込まれた。

この新線は、翌1972年11月17日に公布された「都市モノレールの整備の促進に関する法律」(都市モノレール法)に基づき整備されることになり、1980年に運営会社となる第三セクターの大阪高速鉄道(現在の大阪モノレール)が設立された。

1982年から大阪空港~南茨木間の事業に着手し、続いて1990年には南茨木~門真市間の事業にも着手した。工事は大幅に遅れたが、1990年から1997年にかけて部分開業を繰り返しながら全区間が開業している。

1989年5月31日には、都交審を改組する形で設けられた運輸政策審議会(運政審)が、都交審13号答申の改訂版となる大阪圏の鉄道整備基本計画を答申(運政審10号答申)した。この基本計画は整備の目標年次を2005年とし、すでに事業に着手していた区間や着手直前だった大阪空港~南茨木~門真市間は、2005年までに「整備することが適当である区間」とされた。

これに対して未着工だった門真市以南は、現在の門真南駅を経由して荒本・堺方面に延伸する部分が「今後路線整備について検討すべき方向」とされ、優先的に整備する区間からは除外。その後も具体化に向けた本格的な動きはみられなかった。

このほか、大阪モノレール線の延伸区間として明確には示されなかったが、大阪空港~伊丹付近~武庫之荘方面の新線も「今後路線整備について検討すべき方向」として盛り込まれた。この構想はのちにJR福知山線(JR宝塚線)から分岐して大阪空港を結ぶ構想(大阪国際空港広域レールアクセス)に変化。沿線自治体による調査が行われたが採算性に問題があるという結果になり、実現していない。

2004年10月8日には、近畿運輸局の諮問機関である近畿地方交通審議会が、最大で2020年頃までを視野に入れた、近畿圏の交通の将来像を答申(近畿地方交通審議会8号答申)。近鉄奈良線との連絡が可能な瓜生堂までの区間を「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」として盛り込んだ。

一方、瓜生堂以南は関西本線の駅がある久宝寺を経て堺方面に延伸する区間が検討されたが、「中長期」路線としては盛り込まれなかった。現在のおおさか東線の需要などを踏まえて久宝寺方面への延伸可能性の検討も必要とする文言を盛り込むにとどまっている。

この答申後も、しばらくは具体化に向けた動きがほとんど見られなかった。しかし大阪モノレールは開業以来、ほぼ一環して利用者が増加。2015年度には繰越損失を解消するなど経営が順調だったこともあり、この頃から門真市~瓜生堂間の延伸に向けた動きが活発になった。

大阪府などは2016年度から、測量や地質調査、基本設計などを実施。大阪高速鉄道も軌道法に基づき軌道事業の特許を申請し、2019年3月に特許を受けた。続いて2019年7月に工事施行認可を申請し、翌2020年4月に認可。2020年度から現地工事に着手し、2029年の開業を目指している。

瓜生堂以南は沿線自治体の堺市と八尾市、松原市が堺方面への延伸を要望しているが、具体化に向けた動きはみられない。

大阪モノレール線の延伸区間の路線図。【作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】

データ

事業者大阪モノレール
線名大阪モノレール線延伸線
区間・駅門真市(大阪府門真市)
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門真南(仮称、大阪府門真市)
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鴻池新田(仮称、大阪府東大阪市)
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荒本(仮称、大阪府東大阪市)
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瓜生堂(仮称、大阪府東大阪市)
 ↓
※松原・八尾・堺方面
距離8.9km
種別軌道事業
種類跨座式モノレール
軌間跨座式
動力電気(直流1500V)
単線・複線複線
開業予定時期2029年
備考都市モノレール法に基づく都市モノレール

進ちょく状況

2018年7月11日軌道事業特許申請(門真市~瓜生堂)
2019年3月19日軌道事業特許(門真市~瓜生堂)
2019年7月22日工事施行認可申請(門真市~瓜生堂)
2020年4月1日工事施行認可(門真市~瓜生堂)
2020年6月1日※参考:名称変更(大阪高速鉄道→大阪モノレール)