上瀬谷ライン

概要

上瀬谷ラインは、横浜市が構想している中量軌道輸送システムの新線。相模鉄道(相鉄)本線の瀬谷駅付近と、米軍の通信施設跡地(旧上瀬谷通信施設地区)を結ぶ。早ければ2022年度の着工、2026年度末(2027年春)の開業が見込まれている。

上瀬谷ライン(赤)の路線図。【作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】

旧上瀬谷通信施設の再開発により創出される交通需要に対応する。全体の距離は約2.8kmで、ルートの大半は環状4号線(上瀬谷線、いわゆる「海軍道路」)に沿う形。全線を複線で整備する。

相鉄の瀬谷駅付近に起点の瀬谷駅を設けて旧上瀬谷通信施設地区に入り、現在の上瀬谷小東側交差点かその周辺のエリアに終点の上瀬谷駅が設けられる。車両基地は上瀬谷駅から北東へ650mほどの地点に設けられる。

軌道の構造は瀬谷寄り約1.9kmの南区間と上瀬谷寄り約0.9kmの北区間に分け、次の4案が考えられている。

案(1):南区間=地下式、北区間=地表式
案(2):南区間=高架式、北区間:地表式
案(3):南区間=地下式、北区間:高架式
案(4):南区間:高架式、北区間:高架式
※車両基地は4案とも地表式

環境影響評価(環境アセス)手続きに基づく計画段階配慮書では、南区間について「住宅地の新たな改変区域を小さくするため、道路空間を立体的に利用する案を設定」したとしている。

都市計画法に基づく都市高速鉄道の整備事業で、鉄道法規上は軌道法に基づく軌道として整備することが想定されている。導入機種は固まっていないが、いわゆる「次世代型路面電車」と呼ばれる軽量軌道交通(LRT)や、都市モノレール法に基づくモノレール、自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)などが想定されている。

将来的には大規模団地がある若葉台付近を経由してJR横浜線の十日市場駅や長津田駅などに延伸する構想もある。全線が複線での整備を想定していることや、車両基地の敷地面積が約5haと想定されていて、東京都交通局が運営するAGTで全長9.7kmの日暮里・舎人ライナーの車両基地(約4ha)より広いことなどから、上瀬谷以遠への延伸も想定した構造で建設されるとみられる。

経緯

上瀬谷にはかつて旧日本海軍の倉庫施設があり、終戦後は米軍が接収して通信施設が整備された。1950年代には、相鉄が原町田(現在のJR横浜線・町田駅付近)~二俣川~杉田海岸(現在のJR根岸線・磯子駅付近)間を結ぶ鉄道新線の整備を計画。通信施設の東側を通り抜けるルートで1958年に地方鉄道免許を申請した。

しかし、日米合同委員会は1960年、通信施設とその周辺を電波障害防止制限地域に指定。このため相鉄の新線も建設が難しくなり、相鉄は1967年に新線の地方鉄道免許申請を取り下げた。

その後、通信施設内の重要な施設は別の場所に順次移転。2004年には日米合同委員会で通信施設を日本に返還することが確認され、2015年に土地を含む施設全体が返還された。これを機に横浜市は旧上瀬谷通信施設地区の再開発を構想し、同地区へのアクセス交通機関を整備することも考えられるようになった。

これに先立つ2014年、国土交通大臣が交通政策審議会(交政審)に対し、東京圏の今後の鉄道のあり方について考えをまとめるよう諮問。圏内各地の鉄道構想の進め方について検討が進められていたことから、横浜市は2016年1月、上瀬谷通信施設跡地の利用についても意見を盛り込むよう要望した。

同年4月の交政審の答申(交政審198号答申)では、上瀬谷の軌道系交通システムのルートなどを定めて盛り込むことはなかったが、「例えば上瀬谷通信施設跡地の開発等に対応する新たな交通については、関係地方公共団体・鉄道事業者等において、LRT等の中量軌道等の導入について検討が行われることを期待」するとし、整備に際してはBRTを導入してから将来的に中量軌道に移行するといった段階的整備も視野に入れるべきとした。

2019年には、国際園芸博覧会(花博)を旧上瀬谷通信施設地区に誘致することが決定。同年6月に神奈川県や横浜市の関係団体などで構成される誘致推進協議会が発足し、9月に立候補が承認された。2027年の花博はほかに立候補している都市がないことから、上瀬谷で2027年3~9月頃に開催されることが事実上決定しており、これに伴い上瀬谷ラインを早期に整備する方向が固まった。

2019年12月、横浜市は旧上瀬谷通信施設地区の土地利用基本計画の素案を作成。環境アセス手続きも始まり、2020年1月に上瀬谷ラインの計画段階配慮書が公表された。今後は2021年度までに着工の準備を完了し、2022年度から工事に着手。花博の開催に間に合わせるため2026年度末の開業を目指す。

データ

区間・駅瀬谷(仮称)(横浜市瀬谷区中央・本郷三丁目・瀬谷四丁目)
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上瀬谷(仮称)(横浜市瀬谷区瀬谷町)
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車両基地(横浜市瀬谷区瀬谷町)
距離約2.8km