横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸

横浜市交通局の1・3号線(横浜市営地下鉄ブルーライン)は、小田急電鉄江ノ島線の湘南台(神奈川県藤沢市)から横浜市の中心部やニュータウンを横断し、東急電鉄田園都市線あざみ野駅に至る40.4kmの地下鉄。途中の関内駅を境に湘南台方が1号線、あざみ野方が3号線になる。

あざみ野駅で発車を待つブルーラインの列車。【撮影:2020年8月8日、草町義和】

このうち3号線は、あざみ野駅から川崎市麻生区内にある小田急電鉄小田原線・多摩線の新百合ヶ丘駅まで延伸することが計画されている。これにより、横浜と川崎市北部・多摩地域を直結する鉄道ルートを構築。東海道新幹線の新横浜駅と横浜市北西部、川崎市北部・多摩地域のアクセス向上などを図る。2030年頃の開業を目指している。

概要

川崎市内の区間も含め、横浜市交通局が運営する。現在のブルーラインと同じ規格を採用し、延伸部の全区間が複線の地下トンネル。動力は電気で集電方式は第三軌条式になる。設計最高速度は80km/h。

詳細なルートは決まっていないが、あざみ野駅から北西約2kmの地点までは、あざみ野駅から北西に延びる道路の下を通るとみられる。その後、すすき野エリアに入って横浜市と川崎市の市境沿いに北上。川崎市のゴミ処理場の余熱利用施設「ヨネッティー王禅寺付近」から北西に進み、小田急新百合ヶ丘駅の南口付近に到達する。

ブルーラインの路線図。横浜市営地下鉄だが川崎市内の新百合ヶ丘駅まで延伸(赤)する。【作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】
ブルーラインあざみ野駅の末端は延伸できる構造になっている。【撮影:2020年8月8日、草町義和】
あざみ野駅から北西に延びる道路(左奥があざみ野駅)。この道路の下を通るとみられる。【撮影:2020年8月8日、草町義和】

駅は既設のあざみ野駅のほか、横浜市青葉区内の嶮山付近とすすき野付近、川崎市麻生区内のヨネッティー王禅寺付近と小田急新百合ヶ丘駅南口付近に設けられる。変電所と換気塔は未定だが、変電所は3カ所程度を想定。換気塔は駅に設置することを予定している。

あざみ野~新百合ヶ丘間の所要時間は約10分で、現在の路線バスより約20分短縮される。新横浜~新百合ヶ丘間はいまより約8分短縮されて約27分に。東海道新幹線へのアクセス向上が図られる。輸送人員は1日7万9000人と見込まれている。

あざみ野駅と新百合ヶ丘駅を結ぶ路線バス(左)。【撮影:2020年8月8日、草町義和】

事業費は概算ベースで1720億円。このうち約1500億円は地下高速鉄道整備事業費の補助制度で賄うことが想定されている。累積損益の欠損は28年で解消し、累積資金不足も34年で解消するとされている。費用便益比は1.53。

経緯

あざみ野方の延伸は2000年1月27日、運輸大臣の諮問機関だった運輸政策審議会(運政審)の答申した『東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について』(運政審18号答申)で盛り込まれた。

運政審18号答申は目標年次を2015年とし、横浜市域のあざみ野~すすき野付近間は2015年までに開業することが適当な路線として盛り込まれた。一方、おもに川崎市内を通るすすき野付近~新百合ヶ丘間は、2015年までに整備着手することが適当な路線とされ、優先順位が下げられていた。

これは当時、川崎市が新百合ヶ丘~宮前平~元住吉~川崎間を結ぶ川崎縦貫高速鉄道(のちの川崎縦貫鉄道)の構想を推進しており、東急田園都市線と小田急小田原線・多摩線の連絡ルートとしては並行することもあったとみられる。しかし、川崎縦貫鉄道は建設費が巨額で市財政への影響が大きいなどの問題が生じて着工には至らず、計画は凍結。2013年には高速鉄道事業会計を閉鎖し、事実上断念した。

横浜市も運政審18号答申後、市営地下鉄の経営悪化を受けて延伸計画を事実上棚上げしたが、2007年頃から実現に向けて動き出し、2011年には横浜市と川崎市が連携してブルーラインの延伸の実現を目指すとした覚書を締結。2014年にはブルーラインの延伸区間を優先度の高い路線と位置づけ、事業化に向けた基礎調査が始まった。

国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会(交政審)は2016年4月、『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』(交政審198号答申)を答申。ブルーラインの延伸については、事業化に向け横浜市と川崎市が協調して合意形成を進めるべきとした強い調子の意見を付けた。川崎市は2017年度から、横浜市交通局を事業の候補者として調査検討を開始。2018年3月には同市の総合都市計画の中間見直しで川崎縦貫鉄道の計画中止を正式に決めた。

2019年1月には横浜市がブルーライン延伸の事業化を決断し、川崎市とも合意。川崎市域のルートは東側ルート(ヨネッティー王禅寺付近を経由)、中央ルート(王禅寺公園付近を経由)、西側ルート(白山付近を経由)の3案が検討された。翌2020年1月、東側ルートの採用が決定。3案とも建設費や費用便益比などに大きな差はなかったが、既存の鉄道駅から最も離れた場所を通り利便性向上の効果が高いことや、路線バスとの連携効果が高いなどの理由から東側ルートが選ばれた。

2020年度からは環境影響評価の手続きが始まった。今後は都市計画手続きや鉄道事業法などの手続きを進め、用地買収や工事に着手する。事業スケジュールは未定だが、交政審198号の目標年次である2030年頃の開業を目指す。

データ

事業者名横浜市交通局(横浜市営地下鉄)
線名3号線(ブルーライン)
区間・駅あざみ野(横浜市青葉区あざみ野二丁目)
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※嶮山付近(横浜市青葉区)
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※すすき野付近(横浜市青葉区)
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※ヨネッティー王禅寺付近(川崎市麻生区)
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※新百合ヶ丘駅南口付近(川崎市麻生区)
距離約6.5km
種別第一種鉄道事業
種類普通鉄道
軌間1435mm
動力電気(直流750V)(第三軌条集電式)
単線・複線複線
開業予定時期2030年頃