都心直結線(浅草線短絡新線)

概要

都心直結線(浅草線短絡新線)は、都営浅草線の押上~泉岳寺間を短絡するバイパス新線の計画。現在の都営浅草線と同様、京成線と京急線との相互直通運転を行い、東京都心から成田国際空港(成田空港)と東京国際空港(羽田空港)へのアクセスの改善を図る。

都心直結線のルート(赤)。都営浅草線の押上~泉岳寺間(黒点線)を短絡する。 作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】
都心直結線のルート(赤)。都営浅草線の押上~泉岳寺間(黒点線)を短絡する。 作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】

詳細なルートは固まってないが、大深度地下にトンネルを整備することが想定されている。途中の停車駅は、JR東京駅の西側(丸の内側)に新東京駅を設置することが考えられており、バイパスルートという性格上、これ以外の中間駅の設置は想定されていない。

新東京駅の位置は丸の内仲通り直下、丸ノ内線直下、八重洲通り直下の3案があり、丸の内仲通り直下案が有力視されている。常磐新線(つくばエクスプレス線)延伸構想の東京駅もJR東京駅の丸の内側に設けることが想定されており、つくばエクスプレス線と都心直結線の乗り換えがしやすい配置になる可能性もある。

都心直結線が完成した場合、想定されている所要時間は東京~羽田空港間が18分、東京~成田空港間が36分。いずれも乗り換えが解消され、所要時間も20分程度短縮される。

交通政策審議会(交政審)が2016年7月時点でまとめた分析結果によると、輸送密度は12万3800~12万6300人、ピーク時の最大断面輸送量は2万1300~2万1800人。総事業費は4400億円とされている。

事業方式や事業費の調達方法などが決まっておらず、開業時期は未定。羽田空港方面へは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が中心になって推進している羽田空港アクセス線が先行整備される見込み。

経緯

東京~成田空港間に計画された成田新幹線が建設反対運動や国鉄の経営悪化で工事が進まなかったことを受け、運輸省は調査委員会を設置して新幹線に代わる「成田新高速鉄道」の整備を検討。1982年、既設の都営浅草線や京成線と当時計画路線だった現在の北総鉄道北総線などを活用、延伸するB案の推進が決まった。

B案のルートは、東京駅・上野~京成高砂~印旛松虫(現在の印旛日本医大)~成田空港間。このうち東京駅からのルートは、東京駅~江戸橋(現在の日本橋)間に新線を建設し、江戸橋以遠は都営浅草線や京成線、北総線に乗り入れるものだった。

運輸大臣の諮問機関だった運輸政策審議会(運政審)は1985年7月に答申した東京圏の鉄道整備基本計画(運政審7号答申)で、北総鉄道北総線を成田空港まで延伸する区間を盛り込み、2010年7月までに京成高砂~成田空港間が京成電鉄の成田空港線(成田スカイアクセス線)として開業した。一方で東京駅~江戸橋間の新線は運政審7号答申には盛り込まれなかった。

この運政審7号答申に代わる基本計画(運政審18号答申)が2000年1月に策定されると、成田空港に加え羽田空港にも直通できるよう、東京駅と都営浅草線をデルタ線で接続する新線(東京~宝町・日本橋)が盛り込まれ、2015年までに整備着手することが適当な路線とされた。また、空港アクセス列車の所要時間短縮のため、都営浅草線の浅草橋駅に追い抜き線を整備することも盛り込まれている。

その後、運輸省や東京都などが検討を進めたが、高速運転が困難な浅草線内を通ることから、工事費用の割には所要時間の短縮効果が小さいという課題があった。このため、2008年に国土交通省が浅草線短絡新線の構想を打ち出し、2009年にはJR東京駅付近に設置する新東京駅を経由する案が打ち出された。一方、東京都は都営浅草線の利用者減少や採算悪化などを懸念し、都心直結線の整備には消極的な立場をとった。

2016年4月には、交政審が運政審18号答申に代わる東京圏の鉄道整備構想(交政審198号答申)を策定。押上~新東京駅~泉岳寺間を結ぶ都心直結線を盛り込んだが、事業性の見極めや事業スキームの検討を求める意見を付けており、事業化に向けて動き出すべきとの意見は付けなかった。

データ

区間押上~新東京~泉岳寺
距離約11km