北陸新幹線の延伸(金沢~敦賀~新大阪)

北陸新幹線は、東京都から長野市付近、富山市付近を経由して大阪市に至る新幹線鉄道の建設線。金沢~新大阪間の約268kmが未開業の延伸区間になる。

先行整備された福井駅部の高架橋。【撮影:2011年11月17日、草町義和】

概要

東京都から高崎駅までは上越新幹線と線路を共用。高崎~金沢間345.5kmは2015年3月14日までに開業した。未開業区間は日本海沿いの石川県から福井県にかけての金沢~敦賀間が、2022年度末(2023年春)の開業に向け工事中。福井県から関西方面に乗り入れる敦賀~新大阪間は着工に向けた準備が進められている。

北陸新幹線の営業主体は妙高高原駅(新潟県上越市)を境に高崎寄りが東日本旅客鉄道(JR東日本)、金沢寄りが西日本旅客鉄道(JR西日本)に分かれており、現在の未開業区間の営業主体は全線がJR西日本になる。

金沢~敦賀

金沢~敦賀間の125.1kmは、在来線の北陸本線にほぼ並行するルート。このうち金沢駅から車両基地(白山総合車両所)までの約10kmは回送線としてすでに完成している。また、敦賀駅から北陸本線に沿って約1km先の場所(在来線の車両基地=敦賀運転所付近)にも新幹線の車両基地が整備される。工事費は約1兆1858億円(2019年3月29日認可時点)。

ルートの大半は平地で高架橋だが、南越~敦賀間の山岳地帯は北陸本線の北陸トンネルに並行して全長19.7kmの新北陸トンネルが設けられる。駅は北陸本線の既設駅に併設されるが、南越駅は北陸本線の武生駅から東南東へ約2.7kmの地点に設けられる。

小松駅の建設用地。【撮影:2014年5月30日、草町義和】
小松駅の南側(加賀温泉寄り)の工事現場。【撮影:2018年5月12日、草町義和】
工事現場は北陸本線の列車から見える。【撮影:2018年5月12日、草町義和】
小松~加賀温泉間の高架橋脚。金沢~敦賀間は北陸本線の列車から見える部分が多い。【撮影:2018年5月12日、草町義和】

敦賀駅は現在の在来線ホームの南東寄り約100m離れたところに3階建ての高架駅施設を整備する。当面のあいだは同駅が終点になることから、1階に在来線特急ホーム、2階コンコース、3階に新幹線ホームを設置。北陸新幹線から大阪・名古屋方面の在来線特急に乗り換える場合、現在の在来線ホームへ向かうよりも移動距離を短縮する。

営業最高速度は全国新幹線鉄道整備法に基づく260km/h。詳細なダイヤは決まっていない。東京~福井間を直通する列車と、大阪・名古屋方面の在来線特急との接続を図る富山~敦賀間の列車がおもに運転されるとみられる。

所要時間の見込みは、金沢~敦賀間がいまより約30分短い43分。東京~福井間は約20分短縮の2時間53分、大阪~金沢間(在来線特急と北陸新幹線の乗り継ぎ)が約25分短縮の2時間4分、富山~福井間が約25分短縮の1時間12分とされている。車両は北陸新幹線の既開業区間で使われているE7系(JR東日本)とW7系(JR西日本)を増備して運用する見込み。

並行在来線の北陸本線・金沢~敦賀間はJRから経営が分離される。石川県内の区間は、北陸新幹線の金沢延伸開業時に北陸本線の富山県境(倶利伽羅)~金沢間の経営を引き継いだ第三セクターのIRいしかわ鉄道が、金沢以西の区間も経営する方向で検討されている。福井県内の区間は新たに第三セクター会社を設立して経営することになり、2019年8月13日に準備会社の「福井県並行在来線準備株式会社」が設立された。

敦賀~新大阪

敦賀以西は未着工で詳細なルートも決まっていないが、いわゆる「小浜・京都ルート」を採用することがほぼ固まっている。距離は約143kmで、5~10km幅の想定ルート(駅の位置は直径10km程度)で環境影響評価の手続きが進められている。

敦賀駅からは小浜線に並行して西に進み、小浜市付近で南に向きを変え、東海道本線や東海道新幹線と直角で交差するようにして京都市内を通り抜ける。さらに南下して京田辺市付近で南東に方角を変え、大阪市に至る。敦賀~小浜市間の一部と京都市~京田辺市間の一部を除き、トンネル区間となる見込み。建設費は概算で約2兆1000億円(2016年4月時点の価格)。

駅は小浜線の東小浜駅(小浜市)付近と京都駅、片町線(学研都市線)の松井山手駅(京田辺市)付近、新大阪駅に設けられることが想定されており、いずれも在来線の既設駅への併設になるとみられる。

このうち京都駅と新大阪駅は、地下にホームを設けることが考えられており、京都駅が相対式ホーム2面2線、新大阪駅が島式ホーム2面4線の想定。東小浜駅付近と松井山手駅付近の駅は、高架構造で相対式ホーム2面2線で想定されている。

所要時間は敦賀~新大阪間で約44分、福井~新大阪間で約55分、金沢~新大阪間で約1時間20分と想定されている。

経緯

1964年10月1日に開業した東海道新幹線の成功をきっかけに、新幹線を始めとした高速交通機関による全国的ネットワークの整備を図ろうとの気運が高まり、1969年5月30日に閣議決定された新全国総合開発計画で「北陸地方を首都圏および近畿圏と結ぶ北回り新幹線鉄道」の建設が盛り込まれた。

北回り新幹線は1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法に基づき建設されることになり、1972年6月に東京都~大阪市間を結ぶ北陸新幹線の基本計画が決定。1973年には上越・東北(盛岡以南)・成田の3路線に続く次期建設路線として整備計画が決定された。

しかし、オイルショックや日本国有鉄道(国鉄)の経営悪化などの影響を受けて着工は見合わせられ、1982年9月24日には北陸新幹線を含む整備新幹線全線の着工凍結が閣議決定された。

国鉄分割民営化の道筋が定まった1987年1月30日には、着工凍結の解除が閣議決定された。長野以南は1989年8月に着工。1997年10月1日に高崎~長野間が開業した。長野以北は1992年8月から工事に着手し、2015年3月14日に長野~長野間が延伸開業している。どちらの区間も当初はミニ新幹線方式やスーパー特急方式を一部導入することが考えられたが、最終的には全線フル規格で整備されている。

金沢~敦賀間は、1985年12月に高崎~金沢間とともに工事実施計画の認可が申請され、1996年3月には小松~南越間の工事実施計画認可も申請された。長らく具体的な動きはみられなかったが、2004年12月の政府与党申し合わせにより、2005年4月に福井駅部のみ工事実施計画が認可。当初は高架3層構造を予定していたが、これを2層構造に変更して工事に着手し、2009年3月までに高架橋の工事が完成した。

なお、この高架橋に並行しているえちぜん鉄道の勝山永平寺線は、連続立体交差事業による高架化が計画されたことから、2015年9月27日に同線の線路を新幹線の高架橋に切り替えて暫定的に高架化。空いた勝山永平寺線の敷地に同線用の高架橋を改めて建設し、2018年6月24日に勝山永平寺線の線路が新しい高架橋に切り替えられている。

福井駅部の高架橋(左)。撮影当時は新幹線高架橋の脇にえちぜん鉄道勝山永平寺線の線路が地上に敷かれていた。【撮影:2011年11月17日、草町義和】
福井駅部の高架橋は2015年から2018年までえちぜん鉄道勝山永平寺線の線路が仮設されていた。現在はこの高架橋の脇に勝山永平寺線の高架橋が設けられている。【撮影:2018年5月13日、草町義和】
北陸新幹線福井駅部に仮設させていた頃のえちぜん鉄道福井駅ホーム。【撮影:2018年5月13日、草町義和】
えちぜん鉄道に仮に使用していた北陸新幹線福井駅部の高架橋(左)と、えちぜん鉄道の新しい福井駅の高架橋(右)。【撮影:2018年5月13日、草町義和】

2005年12月には南越~敦賀間の工事実施計画認可が申請。2011年12月には、政府・与党が新たな着工区間として、金沢(白山総合車両所)~敦賀間をおおむね10年後強で完成、開業させることを確認。翌2012年6月に同区間の工事実施計画が認可され、工事に着手した。この時点では2025年度の完成が予定されていたが、2015年1月の政府・与党の申し合わせにより、完成時期を3年前倒しして2022年度末に完成・開業することになった。

また、当面のあいだ敦賀~大阪市間の着工のめどが立たないことから、2012年2月に国土交通省が軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の導入を提案。金沢~敦賀間は新幹線を走り、敦賀駅から在来線に乗り入れて大阪方面に直通する列車を運転することも考えられるようになった。

JR西日本も模擬台車による軌間変換試験を2014年から実施。複数の電化方式と耐寒耐雪使用の北陸向けフリーゲージトレインの試験車両を開発し、2016年度にも走行試験を行う計画を立てた。しかし技術的な問題などから開発計画は順調に進まず、JR西日本と政府・与党は2018年8月に北陸新幹線へのフリーゲージトレイン導入を断念している。

敦賀駅から大阪方面のルートは1973年の整備計画決定時、小浜線に並行する形で小浜市に向かい、ここから山陰本線が通る亀岡市を経由して大阪市まで整備する「小浜ルート」が考えられていた。1990年代に入り、北陸新幹線の建設が具体性を帯びるのに伴って、ルートの検討が本格化した。

従来からの小浜ルートのほか、湖西線に並行して京都駅に乗り入れ、京都~新大阪間は東海道新幹線に乗り入れる「湖西線ルート」、北陸本線に並行して米原駅に乗り入れ、米原~新大阪間は東海道新幹線に乗り入れる「米原ルート」が、おもに検討された。

しかし、小浜ルートは建設距離が長く膨大な費用がかかり、湖西線ルートや米原ルートは建設距離は小浜ルートより短いものの、輸送力が窮迫している東海道新幹線への乗り入れが難しいなどの問題があり、検討は進まなかった。2015年頃には、JR西日本が東海道新幹線に乗り入れず、かつ京都を経由する「小浜・京都ルート」の検討を開始。舞鶴と京都を経由する「舞鶴ルート」も浮上した。

与党は2016年、小浜・京都ルート、舞鶴ルート、米原ルートの3案を比較検討することになり、さらに京都~新大阪間は東海道新幹線や東海道本線の北側を通る「北回りルート」1案と、南側を通る「南回りルート」3案も比較検討することに。同年12月には、敦賀~京都間は小浜・京都ルートで建設する方針が固まり、翌2017年3月には南回りルートのうち奈良県内を通らず松井山手付近を通る案を採用する方針が固まった。

建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は環境影響評価手続きを開始。2019年5月に敦賀~新大阪間の計画段階環境配慮書を公表している。

北陸新幹線(金沢以西)の路線図。【作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】
北陸新幹線(金沢以西)の路線図。【作成:運営部(K)/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形』を使用】

データ(未開業区間)

線名北陸新幹線
営業主体西日本旅客鉄道
建設主体鉄道建設・運輸施設整備支援機構
区間・駅金沢(石川県金沢市)
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小松(石川県小松市)
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加賀温泉(石川県加賀市)
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芦原温泉(福井県あわら市)
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福井(福井県福井市)
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南越(仮称)(福井県越前市)
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敦賀(福井県敦賀市)
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※小浜線・東小浜駅付近(福井県小浜市)
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京都(京都府京都市)
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※片町線=学研都市線・松井山手駅付近(京都府京田辺市)
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新大阪(大阪市淀川区)
距離金沢~敦賀:125.1km
敦賀~新大阪:約143km
軌間1435mm
動力交流25000V
単線・複線複線
開業予定時期金沢~敦賀:2022年度末(2023年春)
備考※敦賀~新大阪間のルート・駅は想定

進ちょく状況(未開業区間)

1972年6月29日基本計画決定
1973年11月13日整備計画決定
1985年12月25日(高崎~)金沢~小松、工事実施計画認可申請
1996年3月28日小松~南越、工事実施計画認可申請
2005年4月20日福井駅部、工事実施計画認可申請(追加申請)
2005年4月27日福井駅部、工事実施計画認可
2005年12月12日南越~敦賀、工事実施計画認可申請
2012年6月12日金沢~敦賀、工事実施計画認可申請(追加申請)
2012年6月29日金沢~敦賀、工事実施計画認可
2012年8月19日金沢~敦賀、着工