熊本空港アクセス鉄道

概要

熊本市の中心部と熊本空港を結ぶ空港アクセス鉄道の構想。豊肥本線の三里木駅と空港を結ぶ新線を整備し、豊肥本線と新線の連絡を図る。

熊本空港アクセス鉄道(路線図)

熊本県が中心になって設立する第三セクターが新線を整備して所有。列車の運行はJR九州が行う。現在の構想では熊本駅から熊本空港に乗り入れる列車は運行されず、三里木駅で豊肥本線の列車と新線の列車を乗り換えることになる。事業費の見込みは約330~380億円。

現在、熊本駅から熊本空港まではバスで約1時間。朝のラッシュ時には渋滞の影響で1時間半かかるほか、混雑時にはバスが満員で乗れないこともある。豊肥本線の肥後大津駅と熊本空港を結ぶ無料シャトルバスを使う場合、熊本駅から熊本空港までは1時間~1時間20分くらいかかる。

熊本空港アクセス鉄道が整備されると所要時間は約40分程度に短縮されるとみられ、渋滞や混雑の影響も受けにくくなる。また、熊本県民総合運動公園付近に中間駅が設置され、運動公園へのアクセスも改善される。

経緯

現在の熊本空港は1971年に開港したが、熊本市の中心部から離れていてアクセスが不便だった。熊本県は2004年からアクセス改善のための調査を始めた。

2005年度に鉄道の延伸、熊本市電の延伸、IMTS(磁気誘導式のバス)の導入などの比較検討調査を実施。2006年度と2007年度には、豊肥本線の三里木駅で分岐して空港に延伸する案のルート選定や事業費、需要などの調査を行った。しかし、整備に多額の費用がかかることや、想定される1日の利用者数が採算確保ライン(5000人)を大幅に下回る2500人と見込まれたため、2008年6月に熊本県は検討の凍結を表明。2011年10月から、代替交通として豊肥本線の肥後大津駅と熊本空港を結ぶ無料シャトルバスの運行が始まった。

その後、訪日外国人観光客の増加による空港利用者の増加、沿線人口の増加などにより、再び新線建設の機運が高まった。熊本県は2018年度に空港アクセス鉄道の調査を再び実施。鉄道(豊肥本線三里木駅からの分岐延伸)とモノレール(熊本駅と空港を結ぶ新線の建設)、市電(健軍町停留場からの延伸)の3案を比較検討した結果、鉄道延伸が最も効果的で早期に実現できる可能性が高いと結論づけられた。

2019年2月には、熊本県とJR九州が熊本空港アクセス鉄道の整備の基本的方向性について同意。三里木~熊本県運動公園~熊本空港のルートで整備することや、熊本県が中心に設立する第三セクターが鉄道施設を整備して所有し、運行はJR九州へ委託すること、運行開始後にJR九州がアクセス鉄道の開業による既設路線の増益効果の一部(支出総額は整備費の3分の1)を支出することなどが決められた。

また、豊肥本線が単線で熊本空港への乗り入れ列車を増発するのが難しいこともあり、肥後大津・阿蘇方面の豊肥本線利用者の利便性維持のため、乗り入れは行わないことも決められた。ただし、同意内容では「豊肥本線への乗入れを検討する場合は、負担等の一切を県が負う」としており、豊肥本線の改良費用を熊本県が拠出することによって熊本~熊本空港間の直通列車が運行される可能性はある。

データ

区間三里木~熊本県民総合運動公園付近~熊本空港
距離約10km