九州新幹線・西九州ルート

概要

九州の福岡県福岡市と長崎県長崎市を結ぶ新幹線鉄道の建設線で、いわゆる「整備新幹線」５線のうちの一つ。博多～新鳥栖間では九州新幹線鹿児島ルートと線路を共用する。同じ九州新幹線の鹿児島ルートと区別するため「長崎ルート」「長崎新幹線」と呼ばれることが多い。また、最近は途中の佐賀県に配慮するため「西九州ルート」の呼称が沿線自治体で使われている。

日本では１９６４年１０月１日に開業した東海道新幹線の成功をきっかけに、新幹線を始めとした高速交通ネットワークの整備を図ろうとの気運が高まった。これを受けて政府は１９６９年５月３０日に新全国総合開発計画を策定。九州圏については福岡市から熊本市を経て九州南部に至る九州新幹線鉄道のほか、西九州新幹線鉄道や東九州新幹線鉄道の建設が盛り込まれた。

このうち西九州新幹線鉄道は、福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線として建設することになり、上越、東北（盛岡以南）、成田の３路線に続く次期建設路線として１９７２～１９７３年に基本計画、整備計画が決定されるが、オイルショックや日本国有鉄道（国鉄）の経営悪化などの影響を受けて着工は見合わせられ、１９８２年９月２４日に九州新幹線長崎ルートを含む整備新幹線全線の着工凍結が閣議決定された。なお、１９８５年１月に早岐経由（新鳥栖～佐賀～武雄温泉～早岐～新大村～諫早～長崎）による駅とルートの概要が公表されている。

国鉄分割民営化の道筋が定まった１９８７年１月３０日には着工凍結を解除する閣議決定が行われたが、運輸省が１９８８年８月に示した暫定整備計画案では長崎ルートの着工は盛り込まれなかった。このため長崎県と佐賀県は１９９２年１１月、早岐経由とされていた当初ルート案を嬉野経由に変更して距離を短縮するとともに、武雄温泉～長崎間を新幹線鉄道規格新線（スーパー特急方式）とすることによって建設費の圧縮を図る地元案で合意。２０００年１２月の政府与党申し合わせを受けて２００１年１２月に同区間の暫定整備計画が決定され、２００２年１月に嬉野温泉経由、スーパー特急方式による武雄温泉～長崎間の工事実施計画認可が申請された。また、２００４年１２月の政府与党申し合わせでは武雄温泉～諫早間を着工し、その際に軌間可変電車（フリーゲージトレイン）による整備を目指すこと、未着工区間では長崎駅部の調査を行うことが取り決められた。

しかし、並行在来線となる長崎線肥前山口～諫早間の沿線自治体（佐賀県鹿島市など）が在来線の経営分離に反対したため長崎ルートの工事実施計画は認可されず、２００５年度予算から計上されている建設費も執行できない状態が続いた。このため九州旅客鉄道（ＪＲ九州）と佐賀、長崎両県は２００７年１２月、肥前山口～諫早全区間をＪＲ九州が継続して運行することで合意。新幹線開業後の同区間の赤字はＪＲ九州と両県が２０年間負担することになった。これを受けて２００８年３月に武雄温泉～諫早間の工事実施計画が認可され、４月２８日に着工した。

同年１２月１６日には、長崎駅部を２００９年末までに認可する方向で政府・与党が合意。また、在来線走行区間のうち佐世保線肥前山口～武雄温泉間は新幹線事業枠または在来線事業枠で複線化することを前提に検討することになったが、２００９年８月３０日の衆議院選挙で政権が交代すると、政府・与党は従来の合意を撤回。同年１２月２４日に整備新幹線の基本方針をとりまとめ、長崎駅部を含む整備新幹線の未着工３区間については費用対効果や採算性などを基準に着工順位を決めるとしている。

現在の暫定整備計画（武雄温泉～諫早間は新幹線鉄道規格新線、それ以外は在来線を走行するスーパー特急）による所要時間は博多～長崎間で約１時間２４分とされ、さらにフリーゲージトレインの導入によって博多～新鳥栖間は九州新幹線鹿児島ルートの線路を走行する場合は約１時間１９分とされている。

データ

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