岡山電気軌道の東山本線は、岡山市内の岡山駅前停留場と東山・おかでんミュージアム停留場を結ぶ路面電車の軌道線。JR岡山駅の駅前広場に乗り入れてJR線との乗り継ぎを改善することが計画されている。2023年度に開業の予定。
概要
JR岡山駅から150mほど離れた場所にある岡山駅前停留場から、道路(市役所筋)を横切ってJR岡山駅東口の駅ビルのそばまで延伸。駅前広場にある新千年紀記念モニュメント「吉備沃野」やピーコック噴水を撤去して停留場を新設する。
現在の岡山駅前停留場は西寄り(JR駅寄り)に乗車ホーム、東寄りに降車ホームを設けており、そのあいだに両渡り線を設置している。駅前広部への乗り入れに伴い、西側ホームを廃止して東側にホームに統合し、地下街に通じる階段も廃止。両渡り線は西側ホームの跡地に移設する。駅前広場の新しい停留場には2面3線のホームを整備する。
現在の岡山駅前停留場からJR線に乗り換える際、横断歩道を2回渡りながら約180m歩くか、地下街を経由する必要がある。JR駅に隣接する停留場が新設されると、移動距離は約40mに短縮し、横断歩道の横断回数はゼロに。JR線への乗換時間は1分30秒~3分ほど短縮される。これにより分かりやすさの向上や乗換時間の短縮、道路の安全性の向上などを図る。
駅前広場の整備も含めた総事業費は約43億円とされ、このうち軌道線の整備費は約16億2000万円。道路などの公共施設として整備される部分(インフラ部)は約11億1000万円で、国と自治体の負担が想定されている。残りの約5億1000万円は、架線などインフラ部以外の部分(インフラ外部)になり、国と自治体、岡山電軌の負担が想定されている。
経緯
岡山では岡山電軌が運営する路面電車を軽量軌道交通(LRT)として改良し、市内公共交通の改善を図る動きが古くからあり、これまでに架線柱のセンターポール化や超低床式電車の導入などが行われている。その流れのなかで、岡山市や岡山電軌、岡山の経済団体や市民団体などによる新線の整備構想が浮上した。
1991年、岡山商工会議所が市内中心部の空洞化対策として岡山電軌の環状線化を提案し、新線整備の議論が本格化。1997年には岡山電軌が岡山駅~市役所間の延伸を目指す以降を明らかにし、同年には国や岡山県、岡山市、岡山電軌などで構成される検討委員会も発足した。
検討委は翌1998年、(1)岡山駅~市役所間、(2)岡山駅~市役所~大元間、(3)市中心部1km四方の環状化、(4)環状線化と市役所~大元間の整備、(5)岡山駅~市水道局~清輝橋交差点~柳川交差点の環状化、(6)岡山駅北東部の環状化、の6ルート案を提示した。
岡山市は第一期区間として岡山駅~市役所~岡山大学付属病院間を中心に詳細な検討を進め、道路上への軌道敷設による車線減少の影響を調べる実証実験も行われた。しかし、沿線商店街の反対や、整備費の額などをめぐって調整が難航。路面電車の整備に対する国や自治体の補助制度が充実していないこともあり、検討は事実上中断した。
こうした状況のなかで岡山市は2009年度、岡山駅東口への路面電車乗り入れを長期的な検討課題として位置づけ、2013年頃から検討が本格化。2015年には現在の岡山駅前停留場から地下化や高架化せず、そのまま市役所筋を平面交差して駅前広場に乗り入れる案を示した。
これ以降、平面交差による乗り入れを軸に検討が本格化。2020年3月に岡山電軌が軌道法に基づき延伸区間の特許を取得した。同年秋頃には工事が始まる見込みだ。
データ(軌道事業特許区間)
事業者 | 岡山電気軌道 |
線名 | 東山本線 |
区間・駅 | 岡山駅前停留場(岡山県岡山市) | 新設停留場(岡山県岡山市) |
距離 | 0.1km |
種別 | 軌道事業 |
種類 | 軌道 |
軌間 | 1067mm |
動力 | 電気 |
単線・複線 | 複線 |
開業予定時期 | 2023年度 |
進ちょく状況(軌道事業特許区間)
2019年8月6日 | 軌道事業特許申請 |
2020年1月14日 | 運輸審議会軽微事案認定 |
2020年3月13日 | 軌道事業特許 |