幅広車体を採用
小田急電鉄は11月11日、多摩線の唐木田車庫(東京都多摩市)で新型通勤電車「5000形」(2代目)を報道陣に公開しました。小田急が新形式の通勤電車を導入するのは、2007年から製造が始まった4000形以来12年ぶりです。
5000形の大きなポイントは拡幅車体の「復活」。小田急の通勤電車は2001年から製造が始まった3000形以降、コスト削減などの観点から車体幅が狭くなっていましたが、5000形は再び車体の幅が広がり、車体の下部のみ幅が狭い「裾絞り」も復活しました。小田急は代々木上原~登戸間の複々線化(2018年3月完成)による混雑緩和を実感してもらえるよう、拡幅車体を採用したとしています。
単に車体の幅を広げて車内スペースを広くしただけでなく、袖仕切りに大型強化ガラスを採用したり、天井の照明を埋め込み型にしたりして、見た目にも空間の広がりを感じられるような車内にしたといいます。
モーターやコンプレッサー、空調装置、駆動装置は低騒音型を採用。制御装置はSiC素子のVVVFインバーター方式です。このほか、回生電力量を大幅に増やす新しい制御方式の導入などにより、省エネルギー化を図ったといいます。
5000形はいまのところ60両(10両編成6本)の製造が計画されています。本年度は今回公開された10両(10両編成1本)が導入され、2020年3月から営業運転に入る予定。残り50両(10両編成5本)は2020年度に導入される予定です。
延伸を想定した線路
ところで、5000形の報道公開が行われた唐木田車庫には、将来の延伸を想定した線路が東側に2本、設置されています。今回5000形が展示された線路が、この延伸用の線路です。唐木田車庫内にある線路のなかで、この2本の線路は営業用の線路に準じた扱いになっています。
車両が客を乗せずに車庫内を移動するときは、運転免許を持っていない作業員でも運転することができます。しかし、営業用の線路扱いになっている2本だけは、運転免許を持っている運転士でないと運転できないそうです。
小田急多摩線の延伸については、交通政策審議会が2016年4月に取りまとめた東京圏の鉄道構想(交政審198号答申)で、唐木田駅からJR横浜線の相模原駅を経由してJR相模線の上溝駅までの区間が盛り込まれています。ただ、交政審198号答申では「収支採算性に課題がある」などの意見が付けられていて、いますぐ実現できるような状況ではありません。
いつか5000形が上溝まで運転される日が来るのか。あるいは、上溝延伸が具体化したころには、5000形はすでに引退しているのでしょうか。