「無人食堂車」も実現? JR東日本のイベントで聞いたこと

JR東日本グループのJR東日本スタートアップは12月4日から、大宮駅(さいたま市大宮区)で「STARTUP_STATION(スタートアップ・ステーション)」というイベントを行っています。初日の12月4日はオープンに先立ち、報道陣向けの公開が行われました。

大宮駅西口イベントスペースの会場【撮影:運営部(K)】

これはJR東日本グループが「JR東日本スタートアッププログラム2019」で募集して採択した、新技術による新しいサービス案21件のうち4件を実際に体験できるというもの。詳細は次の通りです。

■最先端AI技術を使った無人ロボットパスタカフェ
提案企業:QBIT Robotics(Qビット・ロボティクス)
最先端の人工知能(AI)と制御技術を駆使したロボットアームを使い、無人店舗でパスタ料理を提供。雇用・労務管理問題を解決するための効率化を図る。

AIとロボットアームを使った無人店舗【撮影:運営部(K)】

■ウルトラ自販機によるエキナカでの無人駅弁・スイーツ販売
提案企業:ブイシンク
新機構の自動販売機を使うことで、従来型の自動販売機では販売が困難だった駅弁やスイーツなど鮮度の高い商品の取り扱いを可能にし、営業時間の拡張や省スペースでの営業展開を図ることでサービス向上を目指す。

中身が崩れやすいものも販売できる自販機。【撮影:運営部(K)】

■瞬間凍結新技術による地域鮮魚の首都圏流通拡大
提案企業:ブランテックインターナショナル
新しい瞬間凍結技術「HybridICE」を活用することで、鮮度を維持したまま流通可能範囲を拡大し、輸送の低コスト化などを実現する。

新しい瞬間凍結技術を使った鮮魚の販売。【運営部(K)】

■AI味覚判定を活用した日本酒レコメンドサービスによる新しい観光提案
提案企業:MIRAI SAGE COMPANY(ミライ・サケ・カンパニー)
AIを活用した味覚判定により、それぞれの客にあった日本酒や酒造、飲食店を提案する日本酒専門の観光案内所兼マイクロバーを開設。

AIによる味覚判定を行う日本酒専門の観光案内所。【撮影:運営部(K)】

4件とも鉄道と直接関係するものではなく、未来の駅構内店舗(エキナカ)のあり方を提案するものといえるでしょう。人手不足への対応を想定した提案も目立ちます。

Qビット・ロボティクスの担当者から無人ロボットパスタカフェの説明を聞いているうち、ふと気になったことがあって、質問してみました。

記者「このシステムは列車内の振動には対応できますか」
担当者「対応していません」
記者「じゃあ、このシステムを使った無人食堂車は無理なんですね」
担当者「JR東日本から『これを列車内に乗せることはできないか』という提案はいただいています」

列車内の供食サービスは、観光列車やクルーズトレインを除くと全国的に縮小の傾向。食堂車はとうの昔に消滅していますし、車内販売も風前のともしびです。採算性の悪化がおもな理由といえますが、揺れる車内のなかでの調理や販売という過酷な労働条件があり、人員の確保が難しいという問題もあります。

そうしたなかで、JR東日本が無人ロボットパスタカフェの企業に「列車内に乗せることはできないか」と言ったということは、実質消滅した一般列車の食堂車や、縮小が続く車内販売の代替策を、いろいろ検討しているようにも思えました。ロボットに調理させる食堂車なら、採算性はともかく人手不足の解決策にはなるでしょうし。

京都鉄道博物館に保存されている寝台客車20系の食堂車(ナシ20形)。【撮影:草町義和】

続いてウルトラ自販機を開発したブイシンクの担当者にも同様の質問をしたところ、やはりJR東日本から「列車に載せられるか」と聞かれたとのこと。イベント会場にあった大型の自販機は搭載できないものの、小型のものなら載せることができるとのでした。

どちらかといえば、ロボットを使った無人食堂車より高性能化した自販機の搭載のほうが実現性は高いように思えます。ただ、JR東日本の新幹線電車だったE1系には弁当の自動販売機が設置されていましたが、これは利用者が少なかったようで、車両の引退を待たずに終了していますし……。

今回発表された新サービス案が「未来のエキナカ」に限定されるのか、あるいは駅だけでなく列車内にも「進出」することになるのか。未来の鉄道を考えるうえでのポイントのひとつになるかもしれません。

「スタートアップ・ステーション」は12月9日まで、大宮駅の西口イベントスペースで行われる予定。開催時間は11~18時です。