日本最南端の「鉄道」に乗ってみた 宮古島「シギラペアリフト」

未来鉄道データベースの運営部(G)です。K君が「日本最南端の鉄道に乗りに行く。原稿はお前が書け」というので、一緒に行きました。

日本最南端のシギラペアリフト。見方によっては日本最南端の「鉄道」だ。【撮影:運営部(K)】

そういえば沖縄のモノレールが延伸開業したとかニュースで言ってたし、てっきりモノレールに乗りに行くものと。まあモノレールなんて東京でも乗れますけど、日本で一番南にあるとなれば、ちょっと興味をそそらられるので。

で、K君に同行して着いた先は……

沖縄本島よりもっと南にある宮古島の宮古空港。【撮影:運営部(K)】

は? 宮古島の空港??? モノレールがあるのは沖縄本島じゃないの?

何がなにやら分からぬまま、島の南側に整備されたというリゾート地「SHIGIRA SEVEN MILES RESORT」(シギラ・セブン・マイルズ・リゾート)へ。車を20分ほど走らせてリゾート地内に入ると、目の前にあったのは空中のロープに 2人乗りの椅子がぶら下がっているリフトでした。

とにかく天気が悪かった。雨のなかを進む「シギラペアリフト」。【撮影:運営部(K)】

K君によると、このリフトは南西楽園パラダイスという会社が運営する「シギラペアリフト」。海岸近くにあるビーチハウス脇の海側乗り場から、北側の小高い丘にある丘側乗り場までの283mを結んでいる。シギラ・セブン・マイルズ・リゾート内にある施設のひとつで、一般には「ザ・シギラリフト・オーシャンスカイ」という名前で案内。「リフトで丘に登って、きれいな海と空(オーシャンスカイ)を眺めてみてください」ということのようです。

海側の乗り場(右)から丘側の乗り場(左)を望む。【撮影:運営部(K)】

で、リフトは法令上、「索道」という乗り物。索道を使って人や荷物を運ぶ場合は、鉄道事業法に基づき索道事業の許可を受ける必要がある。シギラペアリフトも2014年8月22日付けで索道事業の許可を受けた。当初は同年末開業のはずが遅れて2015年10月17日にプレオープンし、2016年4月1日に本格開業とのこと。要するに法令上はリフトも鉄道と同じ扱いなんだそうで、モノレールがある沖縄本島より南にある宮古島のシギラペアリフトは「日本最南端の鉄道」ということになるらしい。

「厳密に言うと鉄道事業法では鉄道と索道を明確に分けて定義づけしてるから、索道は鉄道ではないんだけどね。でも鉄道事業法が適用されている乗り物だから鉄道の仲間とみなす人もいてウンタラカンタラ……」

あーめんどくせえ! 要するにK君はこれに乗りに来たんだろ。まあリフトといえばスキー場の乗り物と相場が決まっているから、こんな南の島でリフトに乗れるというのは、面白いといえば面白い。

何はともあれ、ビーチハウスの脇にある海側のリフト乗り場へ。傘を差してないとすぐにびしょぬれになるほどの天気で風もやや強く、リフトは止まってるし、乗り場にも人の気配がない。「これ運休しているんじゃないの?」と思いながらリフトの椅子に近づくと、脇にあった小さな詰め所から「駅員」さんが現れましたた。乗り場に人が現れたときだけ動かす感じらしい。運賃は片道500円、往復800円とのこと。

海側のリフト乗り場。索道も含めれば日本最南端の「駅」だ。【撮影:運営部(K)】

動き出した椅子に2人でちょこんと座り、まずは丘のほうへ。雨は降りやまず、景色よりも服のぬれ具合が気になって仕方ありません。K君はそんなことおかまいなしに、ひたすら写真を撮っています。

出発直後に上り勾配があって、車が行き交う道路をまたぎました。ネットが張られているから落ちても大丈夫だけど、ちょっとびびります。スキー場のリフトなら地面は柔らかい雪で覆われているし、通常は下を車が通ることもないわけで。

ネット越しに道路が見える。【撮影:運営部(K)】

道路をまたぎ終えると、しばらくは勾配がなくなってまっすぐ進んでいく。地面と椅子の距離はそれほど離れておらず、リフトの脇に生い茂っていた雑草が足がぶつかった。しばらくすると、小高い丘が目前に迫ってきて急な上り勾配に。ここを過ぎると丘側の乗り場に着きました。所要時間は5分といったところです。

雨にぬれながら急勾配を過ぎると丘側の乗り場に到着。【撮影:運営部(K)】
丘側の乗り場。海側乗り場より北だが、もしかすると日本最西端の「駅」かも?【撮影:運営部(K)】

丘側乗り場の前には県道と駐車場があり、ここに車を駐車してリフトでシギラ・セブン・マイルズ・リゾートにアクセスする人もいるようです。

乗り場の脇にあった詰め所の窓には「安全報告書(2018)」と題した紙が張られていて、今年は事故が1件も発生しなかったとか、部品を交換したとか、従業員に対して安全教育を行っているとか、いろいろ書かれています。

丘側乗り場にあった「安全報告書」。鉄道事業法が適用されている乗り物であることを示している。【撮影:運営部(K)】

K君によると、鉄道事業者と索道事業者は毎年1回、安全報告書を作成して一般にお知らせすることが、鉄道事業法によって義務づけられているとのこと。正直、通常の鉄道よりショボい感が否めませんが、法令上はやっぱり「鉄道」なんですね。

続いて丘側の乗り場から海側の乗り場へと下ります。今度は海側を見るようにして進むので、目の前には真っ青な空と透き通るようなエメラルドグリーンの海が……見えるはずでしたが、あいにくの天気で空も海も灰色です。K君は「なんだか『哀しみ本線日本海』のような雰囲気だね」と。その表現、ちょっと古いから……。

下りは海を見ながら進む。【撮影:運営部(K)】

海側の乗り場に着いてから、そういえば乗り場に「駅名」がないことに気づきました。海側の乗り場で女性の「駅員」さんに「駅名はないんですか?」と質問してみたところ、「電車じゃないので駅名はありません」とのこと。

K君は「法令上は停留場(乗り場)の位置と名称を決めて国に申請する必要があるから、一般の案内では使っていなくても『駅名』はあるはず」といいます。まあ駅名を付けて乗り場を案内しているリフトなんて、あまり聞いたことありませんし、高低差があって途中に乗り場がなければ「上の乗り場」「下の乗り場」で十分通じますから、たいした不都合もありませんけど。

ただ、名前があれば「日本最南端の駅はシギラペアリフトの○○駅です」とアピールできるわけで。たとえば「黒いレイバー」より「グリフォン」という名前があったほうが、現実に存在する感じがして分かりやすいじゃないですか(なんじゃそりゃ)。

あとで『Google Earth』などで経緯度を調べてみたところ、丘側の乗り場は北緯24度43分24秒くらい、海側の乗り場は北緯24度43分15秒くらい。索道を除くと日本最南端の駅とされる沖縄都市モノレール線(ゆいレール)の赤嶺駅は、シギラペアリフトより2度ほど北の北緯26度11分36秒ですから、文句なしにシギラペアリフトの海側乗り場が日本最南端の「駅」です。

「沖縄初、日本最南端」をアピールするのぼり。【撮影:運営部(K)】

ちなみに、海側乗り場は東経125度20分30秒くらいなのに対し、丘側乗り場は東経125度20分29秒くらい。わずか1秒のずれなので精査する必要がありそうですけど、日本最西端の「駅」は丘側乗り場かもしれません(索道を除いた日本最西端駅のゆいレール那覇空港駅はシギラペアリフトより2度ほど東の東経127度39分8秒)。

まあ何にせよ「日本最南端の○○駅」とか「日本最西端の××駅」とか、そういうのが好きで全国各地を旅行してる人はけっこういますから、駅名を付けてアピールしやすくしたほうが誘客につながるんじゃないかなと思いました。