「相鉄・JR直通線」開業前の羽沢横浜国大駅を見学してきた

「来賓」JR東日本はあいさつせず

相鉄・JR直通線の開業(11月30日)まで、残り1週間を切りました。これに先立ち、整備主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)と営業主体の相模鉄道(相鉄)は11月25日(月)、相鉄・JR直通線と同時に開業する羽沢横浜国大駅(横浜市神奈川区)で「発車式」を開催。その様子が報道陣に公開されました。

羽沢横浜国大駅で行われた「発車式」。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

まずは地上の改札内コンコースで式典を実施。主催者あいさつ、来賓あいさつ、テープカット、くす玉割りという、ごく一般的な内容でした。

相鉄の千原広司社長は冒頭で「東日本旅客鉄道(JR東日本)様としっかり手を携えて(相互直通運転を)やっていきます」とあいさつ。続いて来賓として、国土交通省の赤羽一嘉大臣、神奈川県の黒岩祐治知事、そして横浜市長代理の平原敏英副市長の3人があいさつしました。

式典で行われたくす玉割り。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

JR東日本も深澤祐二社長や横浜支社長が来賓として出席していましたが、彼らのあいさつはとくになく、テープカットとくす玉割りで壇上に出てきただけ。スケジュールの都合なのかもしれませんが、これから相鉄と「しっかり手を携えてやっていく」側なのですから、ちょっと違和感を覚えました。

相鉄にとっては悲願の「東京都心直通」ですが、JR東日本は事業に直接関与していませんし、まあその辺が「温度差」として現れているのでしょうかね。

「SENS」をじっくり眺める

その後、地下のホーム(上りホームの2番線)に降りて駅長や運転士への花束贈呈式を実施。式典を行ったのはホームのほぼ中間でしたが、「写真映え」を考慮したのか、10両編成の列車(相鉄電車の12000系)の先頭が式典スペースのところに来るよう停車したので、後方の車両はホームから外れていました。

「特急 新宿」を表示した列車の前で花束贈呈。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】
車両は5号車だがホームドアは10号車。6~10号車はホームから外れて停車していた。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

式典を一通り終えたあと、列車が少し東京寄りに動いて所定の位置に停車。来賓を乗せてドアが閉まると、折り返して西谷方面へと走り去っていきました。

所定位置に停車してから発車して西谷方面へ。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

羽沢横浜国大駅は地上に駅舎、地下には10両編成の停車に対応した2面2線の相対式ホーム(ホームドア付き)を配置。西谷寄りのトンネルには、上り2番線から下り線の西谷寄りに転線できる片渡りポイント、東京寄りにも下り1番線から上り線の東京寄りに転線可能な片渡りポイントが設置されています。

羽沢横浜国大駅は2面2線。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】
ホームの東京寄り。奥には上下線をつなぐポイントや、複線トンネルの相鉄・東急直通線、羽沢線につながる単線トンネル(下り線)が見える。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

時刻表によると、羽沢横浜国大駅を発着する列車は相鉄線方面はあってもJR線方面はありませんから、下り1番線から上り線の東京寄りに転線するポイントは不要なはず。ただ、相鉄線が運転を見合わせたときに、JR線から相鉄線に直通する列車をここで折り返すときに使うのでしょう。

まあしかし、非常時の折り返しに対応ということであれば、2面2線というのは冗長性という観点で難がありますねえ。できれば2面3線か2面4線にできなかったかと思いますが。ちなみに、相鉄・東急直通線の新横浜駅は2面3線で計画されています。

ホームの東京側から線路を望むと、上下線をつなぐポイントだけでなく、複線のトンネルと単線のトンネルが並んでいるのが見えます。

東京からやってきた下り直通列車が走る単線トンネル。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

複線のトンネルは、2022年度下期開業予定の相鉄・東急直通線。単線のトンネルは相鉄・JR直通線と東海道本線の貨物支線(羽沢線)をつなぐ連絡線で、羽沢線の横浜羽沢貨物駅の下をくぐって羽沢線の下り線に接続します。

また、2番線ホームからはよく見えませんが、羽沢線の上り線に接続する線路もあり、こちらは急勾配で相鉄・東急直通線のトンネルの上に出て、羽沢線に接続しています。

ホームの西谷寄りからはセンス工法で建設された西谷トンネルを見ることができる。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

ホームの西谷寄りからは、相鉄本線の西谷駅につながる西谷トンネルがよく見えます。先日の試運転列車では暗闇に包まれていてさっぱりでしたが、今回はSENS(センス)工法で建設された西谷トンネルの姿をじっくり見ることができました。もっとも、外観はNATM(ナトム)でもSENSでも似たようなものですが。

不思議な運賃表…「遠い」ほうが安い?

続いて地上の駅舎に戻って、内外をあちこち観察。特に興味深かったのが、JRの運賃案内路線図でした。

羽沢横浜国大駅に設置されたJR線の運賃案内路線図。遠い駅のほうが安い? 【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

武蔵小杉駅と羽沢横浜国大駅が直接つながっているように描かれていて、羽沢横浜国大駅の「隣」にある武蔵小杉駅までの運賃は310円ですが、武蔵小杉駅より遠いように描かれている鶴見駅は170円で、なぜか安いのです。

実際は羽沢線と品鶴線を通るため、武蔵小杉駅に到達する前に鶴見駅を通過しますから、運賃計算上は鶴見駅のほうが武蔵小杉駅より距離が短くて安くなるのは当然なんですが。まあちょっと違和感を覚えますね。

羽沢横浜国大駅のコンコース。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】
羽沢横浜国大駅の駅舎。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】
羽沢線を走る2階建て近郊電車215系。奥に羽沢横浜国大駅の駅舎がある。【撮影:2019年11月25日、運営部(K)】

何はともあれ、あと4日。開業が楽しみです。